2015年9月23日水曜日

音楽の響き&本紹介(水:エッセイ・ノンフィクション)藤島大『人類のためだ。 ラグビーエッセー選集』

こんばんは!くじらブックスです。
連休最終日いかがお過ごしでしょうか。
台風21号の発生が心配です。
私は選書・読書もろもろの間に、三線の練習をしていました。
現在の課題曲は「早作田節(揚出)」。
まだまだ残念な出来ですが、それでも、音源を聞きながら弾くうちに少しずつ心地よくなります。
音楽の響きは、歌い弾くほど沁みるようです。
あせらずこつこつ、練習に励みます。

ブログでは毎日、曜日ごとにテーマを決め本をご紹介しています。
※気になった方は、お近くの書店・図書館、または
※kujirabooks.okinawa@gmail.com までご連絡ください

水曜日は<エッセイ・ノンフィクション>
ご紹介する本はこちらです。




現在開催中のラグビーW杯、日本代表が強豪・南アフリカに勝利し、世界中で注目されている。
私のようなラグビー素人は、コメントできる知識も言葉も持っていない。
しかし、ニュースを聞いてとっさにある本を思い出した。それが本書。
スポーツライター・藤島大氏のラグビーエッセイを再編集したものだ。
手にしたキッカケは、出版元が<鉄筆>という新進気鋭の一人出版社であること。新刊予告を見た時から、どんな内容か気になっていた。
読んでみて、ラグビーがどんなに愛されているスポーツか、そして人を育てるスポーツかを知った。
著者が出会い書き留めるラグビーの歴史、選手・監督・OB達の姿は、勝ち負けだけではない精神の強さ、輝きを放っている。
そして何度も引用される、元日本代表監督でスポーツ哲学者、故・大西鐵之佑氏の言葉は、競技者以外にも確実に刺さる強靭さを宿している。

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 学校で教わった理性、知性は、戦場では「なんの役にも立ちません」。だから、そうなる前、戦争に突入する前に、闘争的スポーツを通じてフェアプレイを体現して、どんなに勝ちたくともここを踏み越えてはならない、という倫理を身につけた者たちが「グループをつくる」。そのグループを「社会の基礎集団・社会的勢力(ソシアル・フォーセス)」として「戦争をさせないための人々の抵抗の環」とするのだ。

 大西は、さらに「若い人たち」に向けて語った。

「権力者が戦争のほうに進んでいく場合には、われわれは断固として、命をかけてもそのソシアル・フォーセスを使って(選挙で)落としていかないと、あるところまでウワーッと引っ張られてしもうたら、もうなんにもできませんよ、私たちがそうだったんだから」

(p12より引用)
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大西氏の早稲田大学最終講義は『闘争の倫理』として出版され、広く読まれてきたという。
この言葉に感動した著者は、ラグビーを、世界中のスポーツを訪ねながら、読者に熱く真剣に語りかける。

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 戦争をするためにラグビーをしてはならない。戦争を許すためにもラグビーをしてはならない。戦争をしないためにラグビーはあるのだ。こんなことを仰々しく書いたのでは、いささか青臭いとたしなめられるだろうか。ちょっと恥ずかしいよと。そうではないと思う。傷つきやすく弱々しいかもしれぬ正論を表明できない社会は不幸である。

(p16より引用)
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これが全ての競技者・関係者の考えではないと重々わかっている。
それでも、こんな風にスポーツを語る人がいる、語られる思想があるということが、とても新鮮で驚かされた。
また、この本を今出版しようという出版社の信念も、紙面からひしひしと伝わってくる。
観戦者の立場から、改めてラグビーを、スポーツを知り関わってみたいと思う。
私のように距離を感じている人にも、一度手に取って読んでみてほしい1冊。
W杯を観てみたくなること間違いなしだ。

※9月28日には同出版社より大西氏の『闘争と倫理』が復刊予定。
※こちらも大注目の1冊。読んでみたい。

→ (株)鉄筆


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