2015年9月27日日曜日

台風の行方&本紹介(土:ノージャンル)夏目漱石『彼岸過迄』

こんばんは!くじらブックスです。
台風21号が、明日には沖縄本島に近づくそうです。その後八重山地方にも迫る予測が。
前回の台風整備も未だ終わっていない様子。とても心配です。
皆さまどうぞ気を付けてお過ごしください。

ブログでは毎日、曜日ごとにテーマを決め本をご紹介しています。
※気になった方は、お近くの書店・図書館、または
※kujirabooks.okinawa@gmail.com までご連絡ください

土曜日は<ノージャンル>
ご紹介する本はこちらです。




本日参加した読書会(OMAR BOOKS開催)の課題図書で、初読み。
漱石を読むこと自体、学生以来約10年ぶりかと。
想像した以上に登場人物が多く、物語が<入れ子>構造になっている。
敬太郎という一青年が職を探す場面から始まり、敬太郎の友人・須永、須永の叔父・田川、田川の娘・千代子、さらに別の叔父・松本…など、人物たちがどんどんつながってゆく。
そして語り手が須永へ代わると、話の中心も須永の家族・親類(特に千代子)との複雑な関係に移ってゆく。
終盤は松本視点から須永が描かれ、最後の最後<傍観者>である敬太郎に戻る。語り手・視点が何度も変化する構成だ。新聞連載のため、偶然その流れになった可能性が高いらしい。
しかし個人的に、人物を客観的・冷静に描く文体がより印象に残り、いかにも漱石らしい。
同じく、己の自意識と千代子に対する態度の狭間で苦悩する須永、というのも、漱石作品によくいる人物に思える。
この作品が漱石中期・転換期に書かれたものであり<自意識>描写は後年の作品群に通じるという。なるほど。
<自意識>は現代の若者(特に男性)も同様であり、きっと共感できると思う。
登場人物のそこそこの裕福さ、それによって生じる微妙な<自分探し>も、現代のそれと変わらない。
男と女、世間と自分の相容れなさも、同じだ。
そんな共感が、読み手をどんどん作品へと没入させていく。

今読んでも全く遜色ない、むしろ100年前が身近に感じられる、面白い小説。
漱石が初めての方、初期の漱石しか読んでいない方にも、オススメできる1冊。

※OMAR BOOKSさんでは10月「漱石とわたし」と題して、公開読書会を開催されます。
※詳細はOMAR BOOKSブログをご参照ください。
※個人的にも、しばらく漱石読みは続きそうです。


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